韓国ドラマ・雑感 



私が所謂韓国ドラマなるものをTVで最初に視聴したのが、3年前の夏(02年)。ソン・スンホン、ウォンビン、ソン・ヘギョ主演の「秋の童話」である。続けてその年チェリム、チャン・ドンゴン主演の「イヴのすべて」を観た。どちらも当時の印象として、何となく新鮮な印象を持ったものだ。特に女優陣は日本の女優よりも概ね美人で背が高くスタイル抜群、しかもご承知のとおり韓国は日本以上に学歴偏重社会であるので芸能人といえども総じて、高学歴で占められている。だからというわけではないが、俳優になるにしても日本と異なり学生時代に演劇基礎を磨き、演技力で俳優への道を歩む姿は、日本のような人気先行の素人が演劇の世界にはいるのとは違うようなじがする。


二つのドラマはたまたまテレビのチャンネルを回していたら、このドラマが目に飛び込んできただけで積極的に観たわけではない。それでもなにか妙に懐かしさを覚えるのでつい観てしまう点で、日本とは本当に近い国であると実感する。


「秋の童話」は最初どこの国の作品なのかと思いながらついつい最後まで見てしまった。この作品で魅力的なウォンビンの格好良さに殊のほか印象的であった。また、ヒロインを演じた愛くるしい美人女優ソン・ヘギョに、私の中では一寸この国の印象が変わったのは事実である。


私の世代は、韓国に対する偏見が全くないわけではない。私なども気持ちの上では見下した意識や偏見に嫌悪感が働くのだが、その一方でこの近くて遠いお隣の国である韓国に対して、些かも蔑視や偏見がないのかと自己に問い掛けてみると、明快な言葉が返せないのである。


もし私が隣国韓国に対する己のコンプレックスがあるとすれば、今や誰もが好きな韓国料理に箸をつけられないことである。具体的にいえばニンニクの臭いやキムチを始め唐辛子と肉主体の料理に、大変申し訳ないのであるが食べ物が喉に通らないのである。だから興味があるにも係わらず旅行で訪問できないのである。このようなことなので、私の中では、韓国に対し偏見がないと断定できないのである。


もう一つ、大変失礼ながら長い間韓国語の語感が綺麗に響かない印象が強く、名古屋弁と同じく品が感じられないとずっと思っていた。しかし、韓国スター女優のソン・ユナの発音に、そのイメージは払拭した感がある。彼女の発音は流れるような美しさがあるのだ。不思議なもので、最近はかなり身近な国になった感じである。


今や韓流ブームは定着の感があるが、その火付け役は今更私が語らなくとも至極当然「冬のソナタ」のペ・ヨンジュンとチェ・ジウである。私は2003年にBSで放映されたのは観なかったが、昨年4月にスタートし地上波で毎週欠かさず観た。


最初に流れるテーマ曲は、60年代に流行ったヒット曲「白い恋人たち」や70年代の「愛は陽炎」に似た哀愁溢れる曲想で、これがまた映像と実にマッチして、涙腺を刺激するのである。これに輪をかけて美男・美女の二人の主役が実に人の感性を揺さぶるいい演技をするので、視聴者はどんどんと吸い込まれていくのである。さらに声の吹き替えを行った田中美里や萩原聖人が実に映像とマッチしていた。


私にとって「冬のソナタ」以上に気に入った韓国ドラマがある。キム・スンウ、ペ・ヨンジュン、ソン・ユナ、ソン・ヘギョ主演の「ホテリアー」である。


2話あたりまでは、「冬のソナタ」のようなインパクトはなかったが、それでも韓国ドラマ特有の癖がない。3〜4話当たりから俄然面白くなって、回を追うごとに面白さが倍加してくそんな作品である。


さらに主役をはる役者の演技力が素晴らしく、一寸私の好きなソン・ヘギョも若手では上手い演技をするのだが、如何せん3人が上手すぎるので、この作品に限って彼女は彼らから学ぶべきことが多いと思う。


一方、1〜2話までは、私の好きな美人女優キム・ヒソンが出演していたらと思っていたが、ソン・ユナがホテルの制服姿を頻繁に目にするあたりから、彼女への印象は全く180度変わるのである。


実に魅力的で、愛くるしく、アップにした顔は時折“宮沢りえ”に見えたりするのである。また、多くの女性からソン・ユナのスタイルは憧れの人に選ばれるであろうほどに抜群で、「冬のソナタ」のチェ・ジウ以上にスタイリッシュに見えるのである。特にソン・ユナの脚線美は男性諸氏も生唾ものである。ただ、彼女からかもし出される清楚な佇まいと演技力が秀逸なので、上品さが上回り変な色っぽさが出ないところがいい。


唯一とんでもなく色気を感じるのは、4話で先輩社員との取っ組み合いの喧嘩をした後の乱れた髪になった途端に、可愛い女のイメージから突然大人の女に変身してしまうあたりは、表現が適切ではないが実に女は恐ろしいと思わせるほど、妖艶な雰囲気に一変するのだ。そして、髪をアップにしているときは小さな顔に相俟って意外と大きく見えないのであるが、髪を解かれると大柄の女性であることが一目瞭然に見て取れる。


私がソン・ユナを特に惹かれるのは、全編を通じて彼女が発する韓国語の言葉が実に綺麗なことだ。彼女の声は女性らしい響きと発音で、従来持っていた韓国語に対するイメージが、彼女の登場で全く変わってしまっても言い過ぎではないほど、素晴らしいものである。こんな美しい響きの韓国語を聞いた経験は過去一度もなかった。劇中での彼女は、キム・スンウンと早口言葉で捲くし立てるところが結構あるのだが、この時の印象も気品と愛らしささえ感じてしまうのには全く驚嘆すべきものである。


このドラマの彼女の役柄は、その出で立ちと異なり頻繁にキリッと足を開き背筋を伸ばして怒っているシーンが多く観られる。普通このような態様は女性には滅多にお目にかからないと思うのだが、私などこれが逆に凄く可愛くみえてしまうのだ。


また、聡明で仕事ができるが、凄く純情。反面おっちょこちょいで鈍感、短気で意外と自信がない役柄である。彼女は見事にジニョンを演じていたことにいたく感動している。この当時彼女は27歳だったが、モデルになっても納得してしまうほどのそのスタイルの良さと知的で聡明さを兼ね備えた才色兼備の演技派の女優など、日本ではお目にかからないタイプの女優である。


このドラマでソン・ユナの涙は、涙の女王チェ・ジウとは全く異なる涙を見せてくれている。


特に12話のペ・ヨンジュン扮するドンヒョクとの痺れるような切なくなる会話のシーンは、私の中では最高のシーンと思っている。揺れる女心と仕事への情熱が切々と見て取れて、別れ際のぺ・ヨンジュンの涙が最高の涙腺放出を演出してくれているのだ。因みにペ・ヨンジュンはこのドラマの中で、涙するシーンはたった2箇所しかない。それだけにこのシーンの二人の会話は、何度観ても琴線に響く静の演技に脱帽である。ソン・ユナのこの場面での表情には、完全にノック・アウトでその愛おしさは絶品である。


ソン・ユナのこぼれる涙は本当に泣いているかのような印象なのだ。従って、お涙頂戴というような泣くことに意味のある演技というよりも必然的に涙が必要なときに、眼の中が露を表出して頬に零れ落ちるである。落ちるタイミングは絶妙でじわぁーっと視聴者は涙するのである。私など女性の涙に全くといって動じない人間と思っていたが、彼女のように泣かれるとやっぱり男はだらしないと本当に思ってしまう。


13話ではドンヒョクがシロッコでジニョンを無視するシーンがこれまたいい。このときのソン・ユナの演技には、どきっとするのである。特に振り向きざまの憂いに満ちたえもいわれぬ表情は私のつたない文書能力では表現できないので実に口惜しいが、しばしその眼を見入ってしまうほど、神秘的な美しさがみられる。こんな顔の演技ができる日本の同世代の女優は皆無と思うが如何だろう?


最近の日本の同世代の役者は残念ながら等身大の演技しかしていないレベルの高くないものである。そんな中、ペ・ヨンジュンと同じく、ソン・ユナもまた役によって全く別人と思わせるほどの演技と表情をするので、この女優の本当の姿は一体どうなのか知りたくなってしまう。


ホテリアーのDVDで彼女がインタビューを受けている映像を観たが、役者なら当然のことながらジニョンとは違う容姿と雰囲気にはっきり言って当惑している。こんなこと日本では残念ながらありえないことだ。合わせて、この女優の頭の良さが際立っていると感じるのは、やはりホテリアーのDVDの撮影風景などを映し出した際に、彼女が携帯ビデオを持ち歩き現場や出演者を紹介しているが、本当に上手いと唸ってしまう。


彼女は女優のほか、脚本家、演出家、教育者の顔を持っているスーパー・レディである。こんな女性を直にこの目で確かめたいと思う今最もホットな女優だ。


個人的には、日本でソン・ユナはもっと人気が出て欲しいと願っているが、その一方であまり出て欲しくないと思ったりするそんなファン・エゴが出てしまう魅惑的な美人女優である。


ソン・ユナは韓国でお嫁さんにしたい女優の常連といわれるそうだが、至極納得で私もそう思う。我が息子がソン・ユナのような彼女を連れてきたら、国籍など一切関係なく交際を認めてしまうことは間違いないだろう。


ところで、ホテリアーの終わり方はシリーズUができてもおかしくないと思う。万一、ホテリアーUなるものが作られ、できれば同じキャストでその後のドンヒョク、ジニョン夫婦を画いたとして、どんな風になるのか考えてみると、実に面白い。気が強いジニョンは結婚後も副総支配人として愛するソウル・ホテルに勤めているのは間違いないと思う。できれば前作と異なりこの夫婦にはコミカルに画いて欲しいものだ。そして、ペ・ヨンジュンとソン・ユナの軽妙な演技を是非期待したい。韓国で八色鳥と喩えられる実力派女優、ソン・ユナが演ずるジニョンのズッコケ振りをできれば拝見したいものだ。なぜなら我が妻はジニョンによく似ている。
 



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